
藤原歌劇団がこの演目のダブル・ビルを舞台にかけたのは1986年11月だから39年振りということになる。記録を見て当時を振り返ると東敦子、山路芳久、田島好一、持木文子、永田直美、レナート・グリマルディ、栗林義信というような懐かしい面々が並んでいる。演出は粟國安彦、活躍中の淳氏の父君である。何とも隔世の感がある。指揮を執った星出豊氏は現在も頼もしく活躍中で当団の11月の「夕鶴」にクレジットされている。さて今回は二曲とも岩田達宗による新プロダクションであるが、結婚を前に男に裏切られる女という共通のストーリーの二曲を、恋人に裏切られて結婚前に死んでしまった少女たちの化身である妖精【Le Villi】(幽霊)で結びつけるというユニークな狙いの演出だったようだ。この妖精達が現世では不幸だった女達と悲しみを分かち合うと同時に裏切った男に見失った自分を発見させるという解釈で、この二曲を単なる殺人劇で終わらせることを避けた。これはユニークな結びつけであり解釈ではあるが、しかしどこか共感するものもあった。「ヴィッリ」のアンナを演じた迫田美帆は益々安定したフォルムの美声で好演した。対するロベルトの所谷直生もスピントの効いた美声でこれも好演。そして父親ウルフの清水良一がとても良い味を出して全体を引き締めた。しかし大切な語りの豊島祐壷のイタリア語がリズムが全く一面的で説得力が不足し、そんなことならいっそ日本語の方がよかっただろう。続く「カヴァレリア」は作品がこなれているだけに更に良かった。これは何よりもサントウッツアの小林厚子の好演に尽きる。(ちょっと声が本調子でなかったような気もするが)それでも声も演技も日本人離れしていて、変な言い方だが本場の「オペラ」を感じた。対するトウリッドウの藤田卓也も良く対峙したが後半ちょっと声に疲れが出た感もあるが乗り切った。アルフィオの森口賢二も渋く決めた。ただマンマ・ルーチアの米谷朋子の容姿が若造過ぎで現実感が削がれたのがとても残念だった。柴田真郁と東フィルのピットは良い意味でとても職人的。全体をしっかりコントロールしつつもオペラティックな緊張を絶やさずに縁の下で舞台を盛り上げた。
